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【本】 『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 靖国論』 (小林よしのり)

新ゴーマニズム宣言SPECIAL靖國論 新ゴーマニズム宣言SPECIAL靖國論
小林 よしのり (2005/08)
幻冬舎
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 今年も夏がやって来た。僕にとって夏といえば終戦や靖国ではなく甲子園の季節である。首相の靖国神社参拝などについては、感情的には別にいいんじゃないのとは思うが、強い興味・関心はない。本書で、著者である小林よしのりは首相は断固として靖国神社を参拝すべきだとして靖国神社とそこに祀られている英霊について描き綴りながら持論を展開させている。

 昨今の靖国にまつわる論議として俎上に載っているA級戦犯の分祀について、著者は否定的であり馬鹿げているとしている。分祀という行為は祀っている霊・神を増やすだけであり、それで解決すると考えているのは根本的な認識がおかしいのだという。僕としては、そうであるならばなおのこと、それを踏襲するならば、あえて分祀をして強引に解決してみせる、本来はA級戦犯を祀ったまま、してやったりで彼らの批判をやり過ごして解決してみせるという方策もありではないのか、と思う。分祀したらしたでまたイチャモンつけられて泥沼に嵌るのがオチなんだろうけど。

 国立追悼施設では駄目なのだろうか。政教分離を訴える意見について著者は、死者を追悼する行為そのものが宗教的行為であり、決して宗教から切り離せず、無宗教を以て追悼施設というのはありえないと主張する。では、著者が本書に例として挙げているアーリントン墓地、アーリントン墓地は無宗教ではなく多宗教だということだそうだが、そのように多宗教であればオーケーなのか。これについて著者は本書では明確な意思を表明していない。先の大戦でで亡くなられた方々の姿や「靖国で会おう」などのメッセージ、そして日本が、戦った日本人が、先の大戦でどれだけ酷い目に遭わされてきたかを描き、あくまでも靖国神社の正当性にこだわっているようにみえる。

 著者は、そもそも靖国の問題なんてものは大したものではなく、国内で騒ぎ立てた朝日新聞や左翼が国外に輸出をし、それに乗じた中国や韓国につけ込まれているだけだ、としているが、逆の方向で靖国神社とその周辺が煽ってきた側面がある。本書には描かれていないが、そういう見方も出来る。遊就館と靖国史観なんていう存在があって問題にされている面がある。日本は戦争を反省してないのかという批判に結果として手を貸しているようにも見える。ここらへんに小林的右翼と中国的左翼の共依存的な親近さの臭いがしてギャラリーとしてはプロレスを見ているような気分になってしまうのである。靖国神社の経営が苦しいっていうんで、ますます煽ろうとしているんじゃないかなんてくだらない見方も出来てしまうわけで、どうもこれについてはどちらのサイドにもつきたくない・関わりたくないなとこの手の問題に少しでも足をつっ込んだ一般人はそう思うのではないか。

 それに、小林的な反米右翼が、日本はアメリカにひどい事をされた、勝者によって歴史が作られたといったところで、勝者によって歴史が作られているのは世の常としても、小林的反米が先の大戦での日本と日本人の被害において筋を通そうとするならば、中国や韓国の日本に対する謝罪しろプロパガンダも同様になると思う。例えば南京大虐殺などに対して歴史資料を提示して中国側の意見はおかしいという反論はあろうが、大筋の史観として、ギャラリーとしては同族に見えてしまうところがある。もうちょっというと、日本人として小林的な反米意見を聞くと、やっぱり敗戦国なのだな、と惨めな気分にさせられる。その上でアメリカの行為を中国や韓国よろしく糾弾する気力が僕にはない。

 著者は、靖国論については「アイデンティティ・ウォー」と名づけ、日本の国柄を守るための戦いであるとしている。気持ちはわかる。としかいいようがない。個人的には、小林よしのりのように若い頃はサヨクとして遊んだくせに年をとって体のだらけた漫画家になってする国家主義者の意見を聞くのはたまらなく暗い気持ちになる。本書で主張されている靖国論は、慰霊する方も慰霊される方も、とても純粋で素朴な気持ちを利用しているもののように感じた。自分の中にもその気持ちと通ずるところがあるので共感したし、感動したところがある。エンタメなら拍手喝采を送りたい。が、じゃあ、その純粋な気持ちを現実の戦いの舞台に持ち上げていけますか、となると、指揮を執られる小林よしのり先生には残念ながらついていけそうにない。純粋な気持ちをヒートアップさせるほどに純粋さに徹底的にこだわりたくなる。そのライン上で小林よしのりを見ると、僕は絶望してしまうのである。ある種の、非モテとか革命主義者とかと似ているのかもしれないな。
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