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【本】 『さらば、メルセデス』 (秋元康)

さらば、メルセデス さらば、メルセデス
秋元 康 (1991/10)
角川書店
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 一人の若者にスポットを当てた秋元康の自伝的小説。他愛も無い内容で、平凡な学生でありながら常にどこかで引いていて鳥瞰できる冷静さと日常に飽いているアンニュイな面を持つ、という風に自分を位置づけている。格好悪いところをちょこっと曝け出しつつも、コンプレックスなところは出さない。作品からは明るくて健全な自己肯定性が窺えるが、読んでいる方からすると何か物足りない。その何か物足りない秋元康という存在がエンターテイメントの世界において非常に重大な存在になっている。放送作家として、作詞家として、小説家として、秋元康がこれほどまでに活躍できるというところに、僕は秋元康の作品があまり好きではないので首を傾げてしまうところはあるのだけれども、やはりあらゆる面での才能・実力に恵まれているということなのだろう。単に流行を追いかけてそれを肯定するだけの作家だとしても、他の追随を許さない嗅覚・感性・技術、そして社交能力、これは要するに何をやってもうまくいくという要素を兼ね備えている。事実、彼は世の中を的確に捉えていて、ヒット作を生み出す。

 というのは誉めすぎか。そういえば今夏に公開される映画『伝染歌』ってどうなんだ。「歌えば、死ぬ」ってどうなんだ。着信アリは一応の成功をおさめたらしい。発想的にはリングのオマージュのようなもので陳腐だったが、内容が何とか観られるレベルのものだった。今回の伝染歌は発想の時点で既に着信アリのB級パロディを更にB級パロディっぽくしたレベルなだけに……厳しいんじゃないの。秋元先生、大丈夫なんですか。
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