【映画】 『サンキュー・スモーキング』
![]() | サンキュー・スモーキング (特別編) (2008/04/16) アーロン・エッカート 商品詳細を見る |
タバコ研究アカデミー所属のPRマン、ニック・ネイラーの使命は、得意の話術でタバコ業界への手厳しいバッシングをかわすこと。その巧みな論理のすり替えテクニックから「情報操作の王」と異名をとる彼の評判はすこぶる悪いが、一人息子のジョーイだけはそんな父親を尊敬していた。訴訟を未然に防ぎ、反タバコ法案を掲げる上院議員をやり込め、ハリウッドをも巻き込むあの手この手の戦略を展開するが、思わぬ落とし穴が待っていた…。2006年のアメリカ映画。圧倒的にタバコバッシングの方向に流れている社会の中で、タバコ研究アカデミーのPRマンが得意の話術でタバコ業界への批判をかわしていく作品。
この男、憎めない。信用ならないと思いながら、ついついその喋りの魔法にかかってしまう。乗せられてしまうのだ。ローン返済のためと割り切った仕事ぶりには抜け目がないのに、若くてきれいな女にはガードが甘かったり、息子のジョーイに「自分で考え、自分で決める」ことの大切さを説く、真っ当さも持ち合わせた主人公ニック。この役にパーフェクトだと監督に言わしめた、アーロン・エッカートがチャーミングだ。クリストファー・バックリーの傑作小説「ニコチン・ウォーズ」を原作に、新鋭ジェイソン・ライトマン監督の、長編第1作となるこのタバコをめぐるラプソディーは、マーケティング第一のアメリカ社会を、辛辣にユーモアたっぷりに描いている。
(goo映画 http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD9504/story.html)
知的論争エンターテイメントというのが日本公開時での本作のキャッチアピールだったようだが、ウィットに富んだ議論が主人公を中心に行われるものの、基本的には論理のすり替えにより、AよりもBはもっと酷いといったような大衆向け情報操作だけが延々と行われる。
コメディとしては現実社会への皮肉とユーモアのバランスが絶妙で面白かった。如何に大衆を納得させるかというパフォーマンスで世の中が流れてしまう事への警告。それを社会にとっての悪役である煙草の擁護者の立場で描くアイディアの素晴らしさが秀逸。如何な悪役にも言い分があるとも取れる(というか、禁煙運動が自らを含む個人の幸福を追求しているように、彼ら悪役もまた自らを含む個人の幸福を追求している)。プライベートには、そんな悪役ですら意外と平凡な幸せを掴むことに四苦八苦しているパパ(男)なんだという視点がある。
主人公が息子を通して真摯に訴えていたのは「自分で考え、自分で決めることの大切さ」だった。それが自由である、と。しかし、本作がそう単純にいかないのが、つるんでいる連中にアルコールや銃、果ては軍事兵器の擁護者までいることだ。これがマイケル・ムーア的な存在が主張するところの自由(自己責任)に対するコストの暗示によって、事の単純化を自己批判で防いでいる。
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