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【本】 『風を見た少年』 (C.W.ニコル)

風を見た少年 風を見た少年
C.W. ニコル (2000/06)
講談社
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 著者C.W.ニコルのもう一人の自分に非常に近しい存在、時に自分に重なる存在である少年の「あいつ」を主人公にしたファンタジー小説。

 この小説の「あいつ」という存在と軸になる考え方は、肉食を避けたり、誰かを傷つけることを忌み嫌っていたりと著者のナチュラリストとしての考え方を愚直に反映している、というのがこの小説を読み始めた頃の感想だが稿を進めていくと、これが単に自然を慈しむ優しい少年の物語ではなく、最初の頃は人間を含めた動物たちが肉食行為に至る事に対して嫌悪感を抱く「あいつ」がやがて食物連鎖について理解をし、また、そこから、平和のために戦うという矛盾に対しての葛藤を乗り越えるという飛躍を経て、独裁者に対して革命を起こすという物語になっている。

 児童文学の色合いが強く、独裁者と市民などの二項対立で物事がわかりやすく書かれていているが、主人公の「あいつ」が無邪気すぎるが故に引き起こしてしまった事故や事件について、無邪気であるが故に極めて軽く扱われているのが子どもという立場を利用しすぎていてちょっとずるいなと思った(この点において反省の有無をのぞけば子どもというのは作中に登場する独裁者ブラニックと変わらない残酷さを持っている。後半の「あいつ」と独裁者の魂の旅はそこまで考を寄せて書かれたのだろうか)。また、戦争がそうだが、どちらも正しいと思って戦っているから、と達観し、翻弄されながらも距離を置く姿勢に終始するのならともかく、最終的には片方の味方についてしまったことで終盤の主人公の無邪気さが失われてしまっている。

 もっとも、それは、手順を経て成長した「あいつ」が意図的に描かれているのだろう。示唆に富む小説ではある。
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