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【本】 『限りなく透明に近いブルー』 (村上龍)

限りなく透明に近いブルー 限りなく透明に近いブルー
村上 龍 (1978/12)
講談社
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 作家、とりわけ私小説的なものを書く純文学作家において概ね三作目あたりまでにその作家の全てが盛り込まれているといわれたり、または、純文学作家は処女作をなかなか超えられないといわれたりするが、村上龍の処女作『限りなく透明に近いブルー』もまたその後の村上龍作品の原点ともいえる要素がふんだんに盛り込まれている。例えば、きれいな海岸の広い砂浜でリリーとリュウが二人並びながら遠くの町の祭り、そして戦争を見ていたというリリーの夢は『海の向こうで戦争が始まる』の設定へと繋がっていく。他にも麻薬やアメリカ黒人兵などその後の村上龍小説の根幹になる要素がふんだんに描きこまれている。

 しかし、何といっても本作で村上龍の原点ともいえるべき点は、村上龍という作家の剥き出しの感受性であろう。例えば最近芥川賞をとった絲山秋子(沖で待つ)などだと、一つ一つの出来事に距離をとりながらツッコミをする余裕で物事をみつめるいやらしさやシニカルさがあるのだが、村上龍は一つ一つの出来事、些細な出来事に対してすらもいちいち「本気」なのである。如何に滑稽な出来事であろうとそれを嘲笑せず、物珍しい出来事であったとしてもあたかも誰もが自然に体験する現象であるように受け止め、素通りしてみせるのである。だから、物語のリズムを壊し読者を興醒めさせるツッコミなどがなく、不自然な世界であるはずなのに自然なものに錯覚させられてしまうのである。

 嫌悪感を示し、絶対に受け入れられないという人も相当数いるらしいが、剥き出しで無防備な感受性をエネルギー溢れる筆致で描ききられていて、村上龍という作家を知る上で是非とも味わっておきたい作品だ。
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