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【本】 『生きるヒント 自分の人生を愛するための12章』 (五木寛之)

生きるヒント―自分の人生を愛するための12章 生きるヒント―自分の人生を愛するための12章
五木 寛之 (1994/06)
角川書店
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 人間の営みの中には、食べて寝るという、即物的というか、動物的な要素が不可欠なものとして存在していますが、言葉やしぐさ、あるいは物で<飾る>ことによって、動物的な行為を一歩進んだ精神世界の域にまで引き上げている面もあるのではないかと思うのです。
 たとえばセックスは、本来動物的なもの、本能のまま自然におぼえて自然にやればいい−−という考えもありますが、文明が成熟するにつれ、動物のそれと区別したくなってくる。そのために、愛の言葉を並べ、美しいしぐさを追求し、それらで飾らなければ、恥ずかしくてやっていられなくなってゆくのではないかと思うんです。
 愛と技術、といいますと、ものすごく相反することのように思われがちですね。ひとつは精神的なものであり、ひとつはなにか実用的なものがある。だけど、そうではなくて、愛もひとつの技術であるという考えかたが、文明の成熟の中にはあるのではないかと思うのです。
 生活していく上でのちょっとしたヒントとして、日常に表れる感情やしぐさなどについて五木寛之の世界を提示し、読者に対して人生の合間にちょっと考えてみることを奨励している本である。

 本書にて取り上げられている12のテーマ、歓ぶ(よろこぶ)・惑う(まどう)・悲しむ(かなしむ)・買う(かう)・喋る(しゃべる)・飾る(かざる)・知る(しる)・占う(うらなう)・働く(はたらく)・歌う(うたう)・笑う(わらう)・想う(おもう)についての捉え方には作家としての際立って高いセンスやエネルギーを感じなかったが、ただ、いい年の取りかたをしているな、と思わせられる穏やかな知識と見解の披露の仕方には好感が持てた。巷ではちょいワル親父などという言葉が出回っているが、五木寛之のように人生の年輪を感じさせるタイプの方が断然魅力的だと僕は思う。
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