【本】 『避暑地の猫』 (宮本輝)
![]() | 避暑地の猫 宮本 輝 (1988/03) 講談社 この商品の詳細を見る |
主人公の「ぼく」は別荘番をする一家の息子。母と父と姉がいる。オーナーの布施金次郎と「ぼく」の母が不倫関係に陥り、地下室で情事を重ねるようになる。それを「ぼく」の姉の美保が12歳の時に見ることになり、今度は14歳になった美保と布施金次郎が情事にふけるようになる。時が流れ、そのことを知った「ぼく」は布施金次郎に、そして何よりも布施金次郎に抱かれていくうちに完全に父から心が移ってしまったと告白する母に対して、憎悪を抱くようになり、殺人計画を練るようになる。母と布施金次郎が地下室で情事に入るところで、「ぼく」は母に向かって灯油をぶちまけるが、その時に父が現れ、「ぼく」の代わりに火を点ける……。簡単なあらすじはこんなところだ。
実の母と姉が一人の男にいいように弄ばれたことに憎悪を抱き、殺すことまで考え、実行に移すという主人公の気持ちに切なくなり同情してしまう。
全体的には割とありがちな不倫をきっかけにした家族崩壊小説のような気がする。母の気持ちは布施金次郎に完全に移っていたわけでもなくて、父との間に新しく子どもを宿していたことがわかるなど、人間の感情の複雑さが描かれているが、それもややとってつけた感じなのは否めない。
人間の抗えない性(さが)というのは愛という名で飾られ感動的にも、残酷にもなる。凡作ではあるがもし本作を読む機会があれば、母を殺す決意までした「ぼく」の気持ちを察してあげてほしいと思う。「ぼく」という存在はとりたてて珍しくない。
- トラックバックURLはこちら
- http://kouichi0226.blog71.fc2.com/tb.php/278-773fef4f
