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【本】 『蹴りたい背中』 (綿矢りさ)

蹴りたい背中 蹴りたい背中
綿矢 りさ (2003/08/26)
河出書房新社
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蛇にピアス』と同時に芥川賞を受賞したのが綿矢りさの『蹴りたい背中』であった。そういうわけで2004年3月号の文藝春秋を購入した当時、金原ひとみと綿矢りさを比べてしまったもので、将来に渡って本を購入するということでどちらかの作家に投資を続けなさいと言われたならば、金原ひとみを選択しただろうが、見た目は綿矢りさ、受賞作品の内容も綿矢りさ、に軍配を上げていた。見た目もそして作品の内容も若さあってこそ、ではあったが、若さを巧く利用するのも立派な才能であろう。

 さて、本作であるが、等身大の(女子)高校生を非常に巧く描けているというところで評価できる。もっとも本作でいうところの等身大の、とは蛇にピアスと同じように社会に馴染めないという属性を纏った者として、である。よって、Amazonのレビューにもあるように「恵まれた思春期・高校生活」を送ったものには理解しがたい想念が描かれているのかもしれない。ただ、僕が怖いな、と思うのは、本作のように内にこもってしまうタイプのキャラクターに対して「理解ができない」という理由でつまらないという感想を下せてしまうところだ。もっといえば、金原ひとみのように適応できない結果としての、ピアスや刺青そしてセックスはわかるけど、内にこもるタイプはわからない、というのが怖い。そういう「恵まれた高校生活を送ったタイプ」は、最近喧しいいじめ問題について何が語れるというのだろか。

 ただ、では本作が文学作品として面白かったかというと話が別になる。高校生的な視点で描けているが、思慮の浅さ、世界の狭さまでもが高校生的になってしまっていて、そのぶん、僕自身が高校生活の時に描いていた想念と照らした時にリアルに感じられたが、一方で、その高校生活の中における緩さ、金原ひとみのように完全にドロップアウトしきれていない中途半端さが、それもまたリアルなのかもしれないが、文学作品として読んだときにあまりにも退屈なのだ。

 クライマックスに、お近づきになったオタク少年の背中を蹴りたいという心情吐露の際の「愛しいよりも、もっと強い気持ちで」という部分を読んだときにそのあまりに陳腐さで平凡な青春小説と化したことにがっかりしてしまった。高校生の思慮の浅さであるからこそ許されるのかもしれないが、あえて文学的に突き詰めてしまうと、思慮が浅く、世界が狭いからこそ、性的行為にこそ及べるかもしれないが、恋愛はできないのではないか、まかり間違っても「愛しいよりも強い気持ち」などとは書けないと思うのだ。愛しいよりも強いのはせいぜい復讐欲求ぐらいではないか。
確かにAmazonのレビューに「怖さ」を僕も感じました。ああいった意見が大衆的なのでしょうか・・・。本を手に取っているだけマシなのかもしれませんが。

これを読んだ時は素直に面白いと思ったし、コウイチさんの様に言葉を変えれば「リアル」でした。
村上龍も金原ひとみには言及していましたが、綿矢りさに関しては「強く推すというより反対する理由がなかった」という風に言っていますね。
僕も金原ひとみの方に興味があります。
2006/11/29(水) 17:49:03 | URL | モンク #/DMwcXg.[ 編集]
>>モンクさん

感性が豊かでメタファーも効いているという点では金原ひとみよりも綿矢りさの方が村上龍的な小説に近いのでしょうが、村上龍は綿矢的な、一見平凡な世界に溶け込めず、かといって逃げ出さず戦わず、といったタイプは嫌いなのかもしれないですね。

金原ひとみの蛇にピアスは面白いかつまらないかだったらつまらないのですけど、一応若い頃に自分の肌でそれなりに大人にも通じるの経験を積んでいるということで表現や知性に磨きをかければ、という期待がもてます。
綿矢の場合は、30間近ぐらいになって島本理生みたいな小説を書かないように願うだけですね……。ティーンズ向けに自身の透明感のある作品内容を徹底的に究めてほしいと思います。
2006/11/30(木) 00:04:27 | URL | コウイチ #-[ 編集]
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