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【本】 『異邦人』 (カミュ)

異邦人 異邦人
窪田 啓作、カミュ 他 (1954/09)
新潮社
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 主人公ムルソーは自己の感覚に忠実に従って生きている。彼女のマリイに結婚したいかと聞かれても、マリイが望むなら結婚してもいいと答える。愛しているかと問われると、恐らく愛していないと正直に答える。どこまでも自分に正直に生きるムルソーはママンの埋葬の日に疲れていて眠かったから起こったところをよく理解できず、ママン埋葬に涙を流すことはできなかった。ただ、ママンが死ななかった方がよかったことだけは確信していた。友人の風紀事件に巻き込まれ、太陽の眩しさに包まれるままに銃の引き金を引き、人を殺した彼は裁判にかけられる。母を養老院に入れたことや母の死の翌日に女と情事にふけり喜劇映画を見たことを責められ、肝心のムルソー自身は置いてけぼりにされて人間性が語られ、死刑の判決が下される。ムルソーは共同体が強制する道徳や宗教というものとはかけ離れた世界の優しい無関心に生きられたことを幸福だと悟り、また、今もなお幸福だと悟る。

 人とは結局無意味な存在なのかもしれない。ムルソーの考え方・生き方に共感できる人は多いかもしれないが、自分がムルソーであることは許せても他人がムルソーであることまで許せる人間はどれほどいるだろう。太陽のせいで人を殺したという人間をわかってあげられるだろうか。人は誰も他人のことを理解できないだろう。それでもわかってあげようとするのが「愛」であると僕は信じているが、こういうことを書くと多くのムルソーさんたちにはシニカルな態度で捉われてしまうのだろう。いいのだ、それで。それは多くのムルソーさんたちが幸福な証拠である。
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