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【本】 『斜陽』 (太宰治)

斜陽 斜陽
太宰 治 (1950/11)
新潮社
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最後の貴婦人である母、破滅への衝動を持ちながらも”恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅していく直治、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。
没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、”斜陽族”という言葉を生んだ太宰文学の代表作。
(新潮文庫 背表紙より)
 時代の変遷にどうしてもついていくことができない者の存在というのはちょうど現在にも通じるところがあるのかもしれない。一億総中流か何か知らないが、そういうものが崩れたとして自分の立場が後は没落していくしかないとなった時、幸福を掴むには自分の信念を貫くしかないのではないか。この小説でいえばかず子は恋と革命のために生きることを決意し、戦闘が開始される。作中に縁組を迫る60歳の芸術家とかず子のこんなやりとりがある。
「私は、あなたを、何と言ったらいいか、謂わば精神的には幸福を与える事が出来ないかも知れないが、その代り、物質的にはどんなにでも幸福にしてあげる事が出来る。これだけは、はっきり言えます。まあ、ざっくばらんの話ですが」
「お言葉の、その、幸福というのが、私にはよくわかりません。生意気を申し上げるようですけど、ごめんなさい。チェホフの妻への手紙に、子供を生んでおくれ、私たちの子供を生んでおくれ、って書いてございましたわね。ニイチェだかのエッセイの中にも、子供を生ませたい女、という言葉がございましたわ。私、子供がほしいのです。幸福なんて、そんなものは、どうだっていいですの。お金もほしいけど、子供を育てて行けるだけのお金があったら、それでたくさんですわ」
 かくしてかず子は恋をした相手との間に子供を宿し、シングルマザーとして生きていくことを決意する。戦後間もない時代においてシングルマザーで生きていくというということは相当の覚悟がいることだったのであろう。三島由紀夫にも同じことが言えるが、小説内に表現される感情の機微や言葉遣いの美しさがこの頃の日本女性に対する美しさへの憧れと想像を掻き立てる。
この世の中に、戦争だの平和だの貿易だの組合だの政治だのがあるのは、なんのためだか、このごろ私にもわかって来ました。あなたは、ご存じないでしょう。だから、いつまでも不幸なのですわ。それはね、教えてあげますわ、女がよい子を生むためです。
 今の世の中で一番美しいのは犠牲者です、とかず子は作中で手紙に書いていて、ふうんと思わせる。かず子の母が「最後の貴婦人」と作中で表現されている。恐らく今もこの日本で貴婦人乃至は貴婦人になれるであろう娘さんというのがおられることと思うが、そういう人にはとても生き辛い世の中なのかもしれない。いずれにせよ、
ああ、お金がなくなるということは、なんというおそろしい、みじめな、救いのない地獄だろう
 というのは、まあ、そうなのだろうな、と。真昼の太陽と違って、陰影、暗さ、というのが斜陽の明るさを引き立てるらしい。果たして現代人の人生も同じだろうか。
 太宰治を「自分の弱さを売り物にする作家」と言った小説家は誰でしたっけ。
 それを読んだとき、反発も感じたのですが、なるほどと納得もしたのです。


 太宰治は、心理描写に優れ、魅力のある作家なのは間違いありませんが、読んでいてイライラすることがあります。

 私がこの「斜陽」を読んだのは20歳ぐらいの時だったと思いますが、この主人公たちの自意識過剰にはうんざりしました。

 確かに昔は羽振りが良かったかもしれませんが、皇族でもあるまいに、たかだか津軽の片田舎の没落貴族が「最後の貴婦人」なんて…。


 この中に、マリー・アントワネットが立ったまま庭でオシッコする話が出てきませんでした?それをお母様がまねするっていう。

 ルイ16世王妃マリー・アントワネットが、ベルサイユ宮殿のロココ風のお庭の中で行なう行為を自分になぞらえるなんて、なんて向こう見ずな人なんだろう、と思ったことを覚えています。
2006/08/01(火) 17:19:39 | URL | kei #-[ 編集]
>>keiさん
気品ある振る舞いをしていれば何不自由なく暮らせていけたという環境が崩れたなかで「最後の貴婦人」というのは暗示的でした。
現代の女性でも本当に真面目な子が社会に飛び出すと俗世間の享楽的な風潮にショックを受けるのかもしれませんね。
keiさんは20歳の頃に太宰を読まれたのですね。もしも近い将来女性と知り合う機会があるならば、僕も太宰なんかを読んだ人と知り合いたいものです。一緒に俗世間を離れられるような? はっは。
真面目な女の子、気品ある女の子には幸せになってもらいたいものです。
2006/08/02(水) 12:17:17 | URL | コウイチ #-[ 編集]
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