【本】 『ティファニーで朝食を』 (カポーティ)
![]() | ティファニーで朝食を 竜口 直太郎、カポーティ 他 (1968/07) 新潮社 この商品の詳細を見る |
映画スターになることと、大きな自我を持つこととは並行するみたいに思われてるけど、事実は、自我などすっかり捨ててしまわないことには、スターになどなれっこないのよ。といっても、あたしがお金持ちになり、有名になることを望まないというんじゃないの。むしろ、そうなることがわたしの大きな目的で、いつかはまわり道をしてでも、そこまで達するようにつとめるつもり。ただ、たとえそうなったとしても、あたしの自我だけは捨てたくないのよ。ある晴れた朝、目をさまし、ティファニーで朝食を食べるようになっても、あたし自身というものは失いたくないのね名刺の住所は「旅行中」、かわいがっている飼い猫には名前をつけず、自由に躍動する女ホリー・ゴライトリー。主人公の「私」の視点でホリーと彼女達に群がる男達の関係が語られる。「私」とホリーは恋人ではないが、彼女が特定の相手とくっつくと少し嫉妬をしてしまう微妙な関係。ホリーは自由を束縛されるのを嫌い、また他人の自由を束縛するのも嫌う。「私」に鳥籠をプレゼントし、その中に鳥を入れないようにお願いするシーンは印象的だ。不安定な生き方は決して自堕落ではなく、確固たる意志に基づかれている。小説の最後、ホリーは事件に巻き込まれ犯罪者となり、ブラジルに高飛びをする。そこでも落ち着くところが見つからなかったホリー。それを受けて「私」のこういう思いで最後に締められる。
アフリカの掘立小屋だろうがなんだろうが、ともかくホリーにもどこか安住の地があってほしいもんだ、と私は心に祈った。安住の地を見つけるということはかなり骨の折れることで、それはホリーという人間が魅力的すぎることが原因で、その魅力とは確固たる意志から来ているのかもしれない。
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