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【映画】 『紅の豚』

紅の豚 紅の豚
宮崎駿、 他 (2002/03/29)
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
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 宮崎駿監督の紅の豚を観た。飛ばねぇ豚はただの豚だ。第一次大戦終了後の世界恐慌とファシズムが吹き荒れるイタリアを背景に、国家や民族に縛られず自由に空を飛び駆ける賞金稼ぎの「豚」を描いた宮崎駿にしては珍しいハードボイルドタッチのアニメ作品。豚というのは勿論メタファーで、豚がイタリア軍にいたころに敵のパイロットを助けたというエピソードから、ファシストの独裁で民族や国家連帯感が強固になっていく中で、相対的に豚という存在になっているということなのだろうけれども、考えれば考えるほどに味が出るし、単純に子ども向け娯楽アニメとしても豚が人間に混じって誰よりも格好よく自由に生きるのだから、何とも諧謔に富んでいる。

 汗臭さが前面に押し出されているわけではなく、とてもスマートな話で、背景であるアドリア海と空の美しさとの対称性が絶妙にとれている。豚も現実的に観たら引いてしまいそうなところをアニメをうまく利用して愛らしく描いてあり見事だ。しかし、その一方で航空機同士の戦いやラストの殴り合いなどは如何にもアニメで迫力に欠けていたのも事実だった。この迫力の無さが全編に通じてしまっている。豚はファシズムから観て卑しい存在であることのメタファーであるはずなのに、あまりにも愛らしすぎて、周囲に溶け込みすぎていて、孤高な具合が弱い。女との関係性でも豚があからさまにモテてしまっており、豚であることに女が引いていくことが全くない、豚であることに周囲に理解がありすぎていて、豚の孤高具合・格好よさというのが、どこか「男はつらいよ」のフーテンの寅次郎のような俗なレベルになっているのだ。それはそれで面白いし魅力的なのだけれども、折角ファシズムを背景にした作品であるのだから、もっと周囲から豚を悪い意味で浮かせて、それでも俺は俺の道を行く、と世間に対して喧嘩を売らせてもよかったのではないか、なんて僕は思う。そういうもどかしさを含めて本作からは宮崎駿の人の良さが窺える。子ども向け、ファミリー向けのアニメとしては間違いなく秀作なのだろうけど、年を取ってから観るとなかなか辛い一本。
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