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【本】 『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論』 (小林よしのり)

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論 新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論
小林 よしのり (2000/10)
小学館
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「日本人」とは何か!「国家」とは何か!この問題を解く鍵が、日本の遺産を守り継ぐ隣国にあった。李登輝前総統、陳水扁総統と、とことん話して見えてきたのは日本の危機だった。なぜ凄絶な“国産み”を続ける台湾を描いたのか。衝撃のラストこそ日本人への激烈なメッセージだ。
 小林よしのりが台湾について描いた本。面白いか面白くないかというと、漫画としては面白くない。主対象となっている台湾を持ち上げすぎていて、小林よしのりの凶悪で醜悪な毒が消えていたからかもしれない。村上龍が何かの著作で日本の悪口を言うことは楽しいと云っていた。外国の悪口を言っても虚しくて嫌な気持ちになるだけだが、日本については自分のことであり、自分は自分の意思で変わることが出来るから日本への悪口は楽しいのだという。そう云えば井上ひさしも『私家版 日本語文法』において右翼よりも日本の欠点を指摘する左翼の方が愛国心があると書いていたような記憶があるが、それはさておき、本書では著者が台湾を心情的に持ち上げすぎているためにシニカルさ・ゴーマンさが弱い。代わりに日本国内の左翼や中国にゴーマンかましている。主張には頷けるものの、どこかピントがずれている感が否めない。

 とはいえ、台湾のルーツ・歴史・国民性などを冷静に分析して指摘されている部分は非常に参考になった。ただ、日本統治時代があったからこそ今の(豊かな)台湾がある、ってのはなあ。そりゃそうなのかもしれないし、そう主張してくれている親日家の台湾人がいっぱいいるのかもしれないけど、なんとなく、戦後日本がここまで豊かになれたのはアメリカのはおかげというのと自分の中で重なった。そこへ持ってきて台湾のナショナリズムについて戦後民主主義の平和で豊かな日本社会の中で育ってきたと自虐的に自身を描く著者が持ち上げ、美化するという行為に違和感があった。著者も同じだったのか、徴兵制で逞しくなった台湾の若者達が平和な日本社会で育った者が創りあげた文化の虜になっているという感慨を表現しているところに、特にこの矛盾についての著者の戸惑いがよく表れていたように思う。

 台湾は親日国家で、台湾のじっちゃんばっちゃんは親日なのかもしれないが、若者はイデオロギーではなくあくまでも文化的趣味的な交流を日本としていると明らかに本書に描かれている。世代で日本に対する考え方・捉え方が違うとわかっていながら、それでも総括的にして、個人主義であり合理主義的であると云う彼らを一方で日本精神が受け継がれているとして素朴に持ち上げてしまっているところに、アイデンティティが揺れていると云われる日本における保守層が台湾を通して無理やり自己肯定をしているようないやらしさが透けて見える。
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